覚者の夢 | As real as unreal

D75 の記述する空間 Z には「リアル」と「アンリアル」という二個の部分空間がある。現実と空想とも言う。両者は物質的基盤に接地されているかいないかで区別される。「物質的」というのを正確に定義するのは面倒なことになりそうなので、ここはたんに「基盤」と呼んでおけばよい。要するに、基という形容詞の付いた盤に接続しているのがリアルであり、していなければアンリアルということだ。特徴的なのは、この盤が、Z では “通常” より小さいのである。言い換えれば、アンリアルがリアルとほとんど対等なのだ。なぜなら D75 にはこう書かれているからだ(文中、「覚」がリアルに、「夢」がアンリアルに相当する)。 夢・覚、おのおの実相なり。大小せず、勝劣せず。 :正法眼蔵「夢中説夢」 夢にみる世界も、覚めてみる世界も、ともに実世界であって、差はないというのだ。そればかりか、 釈迦牟尼仏および一切の諸仏諸祖、みな夢中に発心修行し、成等正覚するなり。 :同 ブッダはじめ諸仏諸祖はみなアンリアルの領域で仏道に目覚め、修行を続け、正覚を得たのだという。通常の世界 W に棲息する人類にとっては受け入れられない話である。W のブッダはまちがいなく覚めていたし、彼の弟子たちは現実にその教えを展開していったのであり夢なんか見ていたわけではない。少なくとも仏教史はそう語っている。だが Z では、仏道は「現実」を越えて展開した。もしそうなら、仏教史学者の扱える範囲を仏道は逸脱しているわけだ。ていうか、逸脱していいのだ。   The space Z described in D75 has two subspaces, REAL and UNREAL, which are distinguished by the condition whether or not it has a material basis. Because clarifying the meaning of ‘material’ would be... Continue Reading →

透明な層 | Transparent layers

当研究所の業務は暗号解読と言ってもいい。われわれは、13世紀に日本で書かれたということしかわかっていない暗号文書 D75 を解いてほしいと依頼された。誰からの依頼かは忘れてしまったし、気にしていない。これまでに解読できた部分から推定すると、どうやら D75 はある稀有な様相をもった空間の仕様を記述しているらしい。その空間を仮に「Z」とすると、Z の風景がまるで現実のもののように立ち現われる–––現成する–––ところまで解読が進捗したとき、この世界にどんな変容が起きるのか、それはわれわれにも予測できない。 解読の最大の障害は、目の前の暗号の難解さではなく、日頃あたりまえのように受け入れている常識だ。今日もその一つを乗り越えなければならなかった。「夢中説夢」、夢の中で夢を説く。 Z では、それは "現実離れ" という意味ではない。夢の中で説かれた何ものかを、やはり夢と呼ぶ。階層の区別を示すはずの「中」というコードが無視され、夢とそこから生み出されるものとの区別が消失した景観が出現する。 Z の階層が透過される。スティーブン・ホールに倣って言えば、世界を成り立たせている見かけだけの階層に無数の孔が穿たれる。 正法眼蔵第二十七「夢中説夢」から Our institute's mission is a kind of code-cracking. We are requested to solve Shōbōgenzō, which is D75 in our designation, a huge collection of ancient codes written by a Japanese monk Dōgen. What has been revealed so far is that D75 seems to be... Continue Reading →

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